徒然なる戰藻錄

WoTとWoWSをプレイしているところなのです

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潜水艦に備えて

ウェーイヾ('ヮ'*)ノ

今回の四方山話は、潜水艦の侵入に備えて、戦前戦中に日本が本土沿岸に設置した設備についての、カルくユルやかな小咄。

海中に潜り、そっと忍び寄る潜水艦は、欧州大戦(第一次世界大戦)、第二次大戦を経て海軍戦備における一大戦力へと進化を遂げました。
21世紀のいま、潜水艦は原子力という神の火を得て無限に近い航洋性を得たほか、昔ながらのヂーゼル・エレクトリック艦も、静粛性の劇的な進歩と攻撃兵器の多様化により、海軍において欠かすことのできない戦力となっています。

港湾や主要航路の近辺には、出入りする艦船をねらって、敵の水上艦艇や潜水艦が港湾口や海峡・水道のあたりをうろつき、時には内部にまで侵入してくることもあります。こういった艦艇がいないかどうかを常時、監視していなければなりません。
しかし、夜間や悪天候のときは電探でもない限りは洋上艦艇すら視認・発見が困難です。ましてや、昼夜を問わず、海中より忍び込む潜水艦の捕捉は輪をかけて困難でした。
海中の潜水艦を捕捉するには、音を用いるか、磁気の変動を探知するかしかありませんが、日本列島は入り組んだ複雑な地形をもち、海峡や湾の数が多く、そのすべてを監視下に置くのは大変なことでした。

周囲が味方の陸地であるため安全であるはずの港湾や海峡、泊地などで潜水艦の攻撃を受けた時ほど、大きな衝撃をもたらすものはありません。
潜水艦戦史上、警戒厳重な泊地に侵入した潜水艦の活躍は数多く、對潜探知能力が向上している今日でさえ、海中深く潜って忍び込む潜水艦の完全な邀撃は勝ち目の薄い勝負となっています。

昭和14年(1939年)10月、獨逸Uボート『U47』は、のちに獨逸潜水艦隊のエースとなるギュンター・プリーン艦長指揮のもと、英吉利海軍の主要根拠地であるオークニー諸島スカパ・フロー泊地に侵入。3萬噸級の英戰艦HMS『ロイヤル・オーク』を撃沈しました。
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スカパ・フローで沈められた英戰艦HMSロイヤル・オーク

港湾封鎖に適した兵器は機雷ですが、これを敷設するために敷設艦を接近させるのは敵に意図と敷設海面を容易に察知されてしまいます。
航空機による機雷投下も同様です。
しかし、潜水艦による隠密敷設であれば、人知れず海域を機雷封鎖することが可能です。
欧州大戦のころには、潜水艦による機雷敷設が行なわれており、『U125』型潜水艦は50個ちかい機雷の敷設が可能でした。
日本海軍は『伊號第一二一潜水艦』型という機雷敷設潜水艦を4艦保有し、太平洋戦争中に4度、機雷敷設作業を行なっています。
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昭和17年(1942年)8月17日、エヴァンス・F・カールソン海兵中佐指揮の海兵隊第2奇襲大隊およそ200名が中部太平洋ギルバート諸島のマキン島に上陸。同地の守備にあたっていた海軍第六二警備隊―――金光久三郎兵曹長指揮の1個小隊64名含む73名と交戦しこれを殲滅しました。
第2奇襲大隊の任務は、ガダルカナル島上陸のカモフラージュ、情報収集、そして将来予想される中部太平洋侵攻時の日本側防備態勢の確認でした。
この作戰で海兵隊の輸送任務に、当時世界最大の潜水艦であったUSS『ノーチラス』SS-168(排水量2,710噸)、USS『アルゴノート』SS-166(排水量2,170噸)の2艦が動員されました。
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USSアルゴノートSS-166
米海軍唯一の機雷敷設潜水艦であった


マキン島奇襲攻撃は一定の成果を挙げたものの、機密書類などの押収はほとんどできず、部隊も30名近い戦死者を出すなど、大勝利には程遠いものでした。
しかも、この攻撃は日本側の防備態勢強化を促し、昭和18年11月のタラワ島攻防戦で米軍を大いに苦しませることとなりました。
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上の画像は攻撃から生還し、奪った日本軍の旭日旗を手にする海兵隊指揮官。
左は攻撃隊指揮官のカールソン海兵中佐。
右は副長のジェイムス・ルーズヴェルト海兵中佐。ルーズヴェルト中佐は当時の米大統領フランクリン・デラノ・ルーズヴェルトの長男です。

このように、潜水艦による活動は守りを固める側にとっては非常に厄介な存在でした。
潜水艦の侵入に対抗して、まず、港湾や海峡の入口に水中聴音機をならべて、潜水艦の音を捉えることにしました。ただ、海には必ず潮の流れが存在しており、海中に潜った潜水艦は機関を停止し、潮の流れに乗って侵入することもありました。
こういった侵入方法に対し、海底にコイルを沈めておき、潜水艦の艦体がもつ磁気を感知する磁気探知機も併用して設置されました。

ご存知のとおり、艦艇はある意味、大きな磁石です。
なぜかというと、たとえば―――
鉄の棒をほかの磁石がつくっている磁場の中で叩いたり、ひっぱたりしていると、その鉄棒は長さの方向に磁化されて磁石になります。その磁石の方向や強さは、周囲の磁場の方向や強さによって決まります。
艦艇を建造するときは、地球という巨大な磁石の上にある造船所で造ります。船台の向きに置かれた鉄板や鉄材を叩いたり曲げたり、リベットを打ったり溶接したりといろいろな加工をするのですから、完成した艦艇はリッパな磁石となっているわけです。
艦艇が発する磁石の性質は、造船所の場所や船台の向き、造り方や加工の程度によって異なっていました。
三菱長崎造船所製の艦船は艦首がN極、艦尾がS極となり磁力は強くなりました。
神戸川崎造船所製の艦船は艦首がS極、艦尾がN極となり磁力は弱かったそうです。
消磁装置を用いて艦体の磁場を消去する作業が行なわれますが、完全に磁場を消し去ることはできなかったそうです。

閑話休題―――

海中に設置する聴音機は、艦艇に搭載される聴音機と原理は同じで、構造は鳥かごのようなかたちに組んだ架台の中央部に、水平の棚を設け、そこに十数個の捕音機―――マイクロホン―――を直径2米ほどの円周上に上向きで取り付けたました。
これを海底に沈め、捕音機の電線をひとまとめにして、海底電纜で陸上の見張所まで引っ張り、測定装置を設置しました。
こういった設備を海軍は防備衞所と呼び、常時、数名の兵士を観測要員として配していました。

防備衞所は辺鄙な場所に置かれ、しかも港湾や海峡に突出した崖の上などにあり、一方、海底は複雑な地形のところが多く、聴音機の設置、電纜敷設、崖上への電纜の引き上げといった工事は難作業の連続でした。

防備衞所設置工事は昭和15年ごろから、本土各地に増設されていきました。
欧州ではナチスによる周辺國への侵略が始まっており、世界情勢は緊迫の度合いを深めている時期でした。
工事作業は水中聴音機、海底電纜を載せた電纜敷設船を用いて行なわれました。
この電纜敷設船は海軍所属の船ではなく、機帆船をチャーターし、船倉に電纜や電線を収納していました。このほか、架台を吊り上げるデリック、電纜用のガイドやブレーキ、工具、試験装置類を載せていました。
聴音機は團平船に載せ、防水覆いが厳重にかけられていました。

海底電纜は護謨絶縁鋼線裝鎧、ジュート捲きの太さ7~8糎ほどで、心線は捕音機1個あたり2本。補強用の中心鋼線をふくめて60心ほどの、固く重い造りのものでした。
港湾や海峡に敷設する聴音機に用いる電纜ですから、長さは短い時でも数粁、長いものでは10粁にもなりました。

設置作業を行なう場所には、電纜敷設船、聴音機の架台を積んだ團平船とそれを曳く曳船が集結します。
場所は外洋なので波が高いことが多く、潮の流れが速い時は作業が危険および架台を海に落とす恐れがあるため、潮の流れが止まるわずかな時間を狙って作業をしました。
波が高すぎるときや、海面が穏やかでも視界が悪く、陸地がかすんで見えない時は作業が中止となります。とくに陸地の状況がわからないことには、正しい設置場所に聴音機を置けないので、視界の有無は重要でした。

工事はまず、設置海面付近の入り江などの仮泊地で敷設船と團平船を横付けし、團平船のほうに電纜の先端を引き込み、架台についている捕音機に接続します。絶縁処理、防水被覆を施します。
当時、船上で水圧試験を行なう装置はなかったため、水深100米ほどの海底に置くため仕様書は厳格であり、防水作業は慎重に慎重を重ねて行なわれました。電纜の絶縁を調べる性能のいい測定機もなかったため、絶縁状態の点検には熟練を要したといわれています。

天候や潮の流れを見定めて、敷設船は聴音機をデリックで吊り下げて仮泊地を出航、敷設海面に向かいます。
船上から六分儀で陸上の3箇所の固定目標―――山や燈台など―――をねらい、相互の角度を測り、三桿分度器で海図の上に現位置をプロットしながら敷設位置へと移動します。
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逓信省電纜敷設船東洋丸
戦前は海底電纜の敷設は軍民問わず逓信省の管轄であった


敷設海面に達すると船を停止させ、潮に流されないよう操船しつつ、架台を海中に吊り下ろします。同時に、電纜も船上から繰り出していきます。
架台を下ろしていく際に、電纜を引っ張りすぎると架台が傾いたり、最悪の場合はひっくり返ったりします。逆に、電纜を長めにおろしていくと海中でもつれあったりするので、架台と電纜の下ろし作業は時間のかかる難しい作業でした。
当時は徴用した敷設船に搭載可能な測深儀や魚群探知機―――戦後に登場―――のような海底の地形を調べる装置はなかったため、レッドという測鉛を使って海底の深さを刻々測っていました。
測鉛ではこまかな地形の把握は無理で、そして潜水夫を使うこともなかったので、架台を海底に水平に設置するのは苦労しました。
架台の上端には傾斜計がついていて、どの方向へも2度傾くと振り子が振り切れて、警報を出す仕組みになっていました。
この音は捕音機にはいり、船上の聴音機にはいってくるので、警報が出るたびに吊り上げて、位置を慎重に変更して設置しました。当然、何度も繰り返すこともありました。

水平に設置できて、警報がでていないのを確かめたら絶縁を測って、上から電流をおくって電磁石をはたらかせ、傾斜計のなかのピンを突出して、傾斜角をマークさせます。これがあとで引き揚げられ、記録として残るわけです。
架台を吊り下げているワイアに、リング状の錘を抱かせて滑り落としていくと、下端でフックにあたり、架台から傾斜計とワイアが外れます。これを引き揚げて、1つの架台の設置作業はひとまず完了です。

架台を設置したら、電纜をそろそろと繰り出しながら、敷設船を陸地へ向けて動かしていきます。
電纜は船倉から上がってきて、梯子を横にしたような滑り台の上を通ります。この台のところには、十数本の丸太が互い違いに斜めに載せてあり、それぞれに乗員がついていました。これは丸太を用いたブレーキで、当時は最も簡単で、そして専門の敷設艦船以外での電纜敷設では一番安全な方法でした。

電纜は固く重く、しかも海中から引っ張られてもいるので、敷設船の速力と丸太ブレーキのバランスのとり方は難しいものでした。ブレーキを緩めると、電纜はどんどん海底へと延びていきます。逆にブレーキがききすぎると軋んだ音を立てたりしました。

海岸にたどり着くと、ボートで電纜を陸揚げします。
海岸では磯波に洗われて露見しないよう、十分な深さの穴を掘って電纜を埋め、崖の傾斜地にも穴を掘って埋めながら崖上へと引っ張り上げました。
人が足を踏み入れることのない崖や雑木林のなかでの作業ですので、これまた大変な労力を要しました。
ようやく防備衞所まで電纜を引っ張り込んだら、測定機に結線を行ない、各種試験を実施します。それが終わり、聴音機から船のスクリュー音が聞こえてきたら、すべての作業は完了となります。お疲れ様でした。

聴音機は長期間、海中に設置されているので、故障や点検時に引き揚げる必要があります。
このときは錨を海底に下ろして引き摺り、電纜に引っ掛けて引き揚げます。
架台はかなりの重さなので、適当に電纜を引っ張ると破損する恐れがあるので、およそ1粁ほどの長さの防蝕をほどこしたワイヤを架台の頭に取り付け、これを使って引き揚げました。

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津軽海峡で電纜敷設中の敷設船釣島丸/戦後撮影
本船は海軍電纜敷設艇釣島であった


前述の防備衞所や、海峡突破を図る敵艦艇を機雷で撃破するための管制機雷敷設海面を秘匿するため、逓信省に委託するのではなく、独自に敷設する必要を感じ、昭和15年(1940年)に『初島』型電纜敷設艇を4艇建造しました。
『初島』は"はつしま"と呼ばず"はしま"と呼びます。
当初は"はつしま"でしたが、途中で漢字はそのままで"はしま"と改名されたためです。

同型艇は『初島』、『大立』、『釣島』、『立石』で、横須賀、呉、佐世保、舞鶴の各鎮守府防備戰隊に配属されました。
『釣島』をのぞく3艇は戦時中に船団護衛で撃沈されました。終戦時に残った『釣島』は海軍から政府に移管され、『釣島丸』として昭和42年まで海底電纜の敷設や補修で活躍しました。

『初島』型は敷設となっていますが、排水量は1,560噸と『吹雪』型や『白露』型驅逐艦に準ずる大きさを誇っていました。この大きさは戦時量産型の『松』型驅逐艦よりも300噸以上大きいサイズです。
20粁分の電纜や聴音機などおよそ400噸前後の重量物を積むため排水量は大きいですが、全長は76米と小振りでした。
機関は予算の関係上、昭和15年建造時の海軍艦艇として珍しく艦本式呂號水管罐という石炭専焼罐を2基搭載しました。石炭170噸を積み、巡航12節(時速約22.2粁)で1,000海里(約1,852粁)の航続力をもち、最高速力は14節(時速約25.9粁)を出しました。



壁|'-')ノよいお年を。
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コメント

Re: NO TITLE

> で、電纜敷設艇…??團平船…??
電纜:でんらん。ケーヴルですね。
團平船:団平船。川沿いとか港なんかでよく見かける船ですね。

> ホントいろんな船というかジャンルがあるなあ…。
たくさんありますよ~
たとえば...

捕獲網艇:潜水艦をからめ捕る網を敷設・回収する。網にからめ捕られた潜水艦は拿捕されるか撃沈されるという寸法。
魚雷追躡艇:練習魚雷の回収が任務。戦後は一部が海上保安庁に移管。
飛行機救難艇:不時着水や海上に墜落した飛行機の搭乗員救助用の小型艇。30艇以上が建造され、戦時中に1艇も沈むことなくすべて生き残ったある意味幸運な艇。戦後は海上自衛隊、海上保安庁に移管。一部は民間に払い下げられる。


> (迎撃機を全く出さず敵艦隊向けに基地航空隊を全振りしてるせいですが)
本来はアシの短い(航続距離の短い)雷電やFw190は敵基地攻撃に参加できず、基地防空に徹することになるんですけどね。

> そのうち艦これにも港防衛戦とか電纜敷設艇とか実装されるかもしれませんね。
> 小型の船だから可愛い艦娘になりそう。
神風型と同じ大きさの戦時量産型の松型驅逐艦や海防艦がチビっこい艦娘となりそうですね

NO TITLE

で、電纜敷設艇…??團平船…??
読めないし!と思っていろいろ検索してたら「丸スペシャル『敷設艇』」なる本が。
ホントいろんな船というかジャンルがあるなあ…。

潜水艦とか相手に港を防衛するのも確かに大変そうですね。
今艦これ春イベのE5で母港を空襲されまくっているので、他人事でない感じがします。
(迎撃機を全く出さず敵艦隊向けに基地航空隊を全振りしてるせいですが)

そのうち艦これにも港防衛戦とか電纜敷設艇とか実装されるかもしれませんね。
小型の船だから可愛い艦娘になりそう。

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