徒然なる戰藻錄

WoTとWoWSをプレイしているところなのです

砲撃戰にまつわる小話 其の壱

ウェーイヾ('ヮ'*)ノ

次期イヴェントでは基地航空隊が参入するそうですね。
日本海軍の基地航空隊については、艦これサーヴィス開始年の夏にこちらで四方山話として載せているので、参考までにどうぞ。

基地航空隊

基地航空隊・其の弐


さて、今回の四方山話は砲撃にまつわるものです。

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出師準備が完了し臨戦態勢下の戰艦陸奥/昭和16年冬

戦前、海上戰鬪の主役は砲撃戰でした。
艦これ提督であればご存じ、ビッグ・セヴンたる『長門』、『陸奥』といった巨砲搭載艦がハバをきかせていたのです。

艦隊砲撃戰では、いかにはやく敵を見つけ、砲彈を射ちこむかが求められていました。

御承知のとおり、艦船は、海にただ浮かんでいるだけでもたえず上下左右前後に揺れています。
荒海を全速航行で突っ走り、ロデオの暴れ馬のごとく揺れ動く艦から砲を撃っても、同じように動いている目標に命中させるのは、ゲームや映画に描かれている以上に困難でした。

しかも、砲撃距離は日を追うごとに遠くなっていき、20世紀初頭では5,000~6,000米程度の砲撃距離だったものが、欧州大戦―――第一次世界大戦―――のころには1萬米をかるく超えてしまいました。
そして海軍休日に突入するや、列強海軍は制限された戰艦保有量で効果的な戰鬪をこなすべく、砲射程のさらなる延伸を追い求めました。

第二次大戦がはじまったころには、日本海軍の『大和』型戰艦や米海軍の『アイオワ』級戰艦が、射程をついに40粁台に到達させました。
40粁の距離ともなれば、艦上からは目標の姿はほとんど見えません。

この超長距離で命中弾を得るための精密な機械装置の開発、そしてそれを完璧に使いこなす熟練の兵員の育成が重要となりました。

当時の砲射撃システムは、方位盤という照準装置で目標を捉えてその方向を定め、測距儀で距離を測り、目標の角度と距離とを、艦内に設けた射撃盤という計算装置におくりこみ、砲を向ける角度を計算し、それから各砲にデータを送る―――という流れで構成されていました。

目標をよりはやく、より遠くから発見し、照準するためには、方位盤についている望遠鏡を艦のなるべく高い位置に置くのがベストです。距離を測るうえでも、やはり高いところに測距儀を置きたいのです。

『扶桑』型戰艦は前檣楼のトップに測距儀を置き、その下に方位盤を設置しました。
『長門』型や『大和』型戰艦は逆で、トップに方位盤を置き、その下に測距儀を置きました。
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日本海軍で最初に方位盤を装備した戰艦扶桑
測距儀は前檣楼トップに置かれている



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昭和6年7月に大阪港で一般公開中の戰艦長門
方位盤は前檣楼トップに置かれている


それでは―――
敵を方位盤照準装置の照準望遠鏡で捕捉しましょう。
方位盤には砲術長の射撃指揮官、旋回手、射手を担当する俯仰手の3人が乗り込んでおり、それぞれに望遠鏡が据えられています。
旋回手は方位盤を旋回させます。方位盤は防弾蔽いのなかにはいっており、方位盤全体が動くようになっています。

なお、『大和』型戰艦の方位盤は八角形の固定室にはいっており、3つの望遠鏡の先が中心部に集められ、その先端部分が方位盤の天井中心部から潜望鏡のようにつきでて、周囲を見渡す構造になっています。

方位盤が目標を捉えると、各主砲塔もその方向へと旋回します。
とはいえ、方位盤の望遠鏡がとらえた方角が、主砲塔の砲口が向く方角ではありません。自艦同様、的艦も動いているのですから、的艦に砲口を指向して発砲しても、砲彈は的艦の通り過ぎたあとの海面を虚しく乱打するだけです。
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戰艦長門の九四式方位盤照準装置/1946年5月米軍撮影
旋回/俯仰用望遠鏡など部品が一部喪われている


目標を捕捉したら、次は各種データ―――海軍ではこれを諸元と呼びました―――を射撃盤に取り入れて計算しなければなりません。
どういった諸元を入力するかというと―――

方位角と呼ぶ、方位盤で捉えた目標の向き。
自艦の針路と速力。自針、自速といいます。
測距儀で測った彼我の距離。
これらの諸元の変化率から計算される的艦の針路と速力。これを的針、的速といいます。
ここまでの情報は、砲撃戰においてもっとも重要な諸元ですが、実際に目標を捕捉してからでないとわからない数値です。

これらにくわえて―――
自艦の上下、左右、前後の動揺による角度変化。
徹甲彈か通常弾かといった砲彈の種類と形状、重量など。
発射用火薬の種類、量、温度、製造後の時間経過による質的変化。
砲齢とよぶ砲身の使用回数。戰艦級の大口径主砲の寿命は75~100發程度です。
砲彈が飛翔する空中の気温、気圧、風向、風速。
砲撃戰実施海域の地球の自転速度。
砲戰時における各砲の高低差、水平距離など。

これらの射撃諸元が、測定機や数値表から、艦の主要防禦区画内の中心部にある射撃盤計算装置に送られ、電気的に自動追尾したり、担当員がハンドルを回して機械式計算機構に調定し、刻々とかわる時間の要素もとりいれて、各砲ごとの旋回角、砲身の俯仰角を算出しました。
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戰艦長門の主砲射撃盤/1946年5月米軍撮影
終戦時の混乱のせいか部品が失われている


ちなみに―――
これら射撃システムには、驚異的なまでの精度が要求されます。
旋回角で例にとりますと、『大和』型戰艦の46糎主砲の射程は4萬2000米になります。目標の艦が全長300米の大型艦で、距離4萬米で併走しているとします。
このとき、方位盤の望遠鏡で的艦の中央に照準を合わせても、砲の向く角度が左右どちらかに1度の5分の1程度ずれただけで、発射した砲彈は的艦の前後に外れて着弾します。
的艦との距離が4萬米から1萬米になった場合でも、角度が1度ずれれば、もう砲彈は当たりません。
そのため、射撃装置の精度は1度の60分の1である±1分となっていました。
ハイテク時代の21世紀ならいざ知らず、機械式、電気式全盛期の当時にあって、±1分の精度を維持するのは容易ではありませんでした。

なお、当時はトランジスタは実用化されておらず、日本の貧弱な基礎工業力で製造される貧相な真空管が主力で、艦上という過酷な環境下に耐えられる品質はありませんでした。そのため、射撃盤の中では、電気的計算回路と機械式函数計算機構を立体的に複雑に組み合わせて運用していました。

ここでちょっとわき道に逸れて………測距儀について。
とくに15米測距儀が有名ですね。『大和』型戰艦に搭載されていましたから。
艦これでも実装されている15米測距儀ですが、これについて簡単に紹介します。
『大和』型戰艦には4つの15米測距儀が搭載されました。この15米というのは基線長の長さを示しています。左右のレンズの間隔をあらわしています。
前檣楼トップ、後檣、第二と第三の主砲塔に搭載されましたが、設置位置の低い主砲塔の測距儀は予備とされ、主として前後檣の測距儀が用いられました。
この測距儀は従来のものよりはるかに大きく、精緻に造られており、製造を担当した日本光学工業株式会社は工場を増設して対応せざるをえませんでした。
なお、価格もケタはずれでした。
15米測距儀の価格は40萬圓。これは現在の貨幣価値に換算すると、ざっと5億円をこえる額になります。

話を戻して―――
砲戰中は自艦も的艦もたえず動いているので、前檣楼の方位盤では、旋回手と俯仰手は常にハンドルを操作して、望遠鏡を目標に合わせていなければなりません。
艦がローリングで、たとえば2度動いたとすると、乗員はほとんど揺れを感じませんが、10粁先の目標を捕捉している望遠鏡からですと、およそ700米も上下に動いてしまいます。
倍率の大きい望遠鏡ですと、目標はすぐに視野から飛び出てしまいます。それに距離も変化し続けます。

刻々と変化する値はたえまなく射撃盤に送られるので、射撃盤から諸元を受け取る各主砲側でも、砲身を諸元に合わせて動かさなければなりません。
『大和』型戰艦の主砲塔は砲塔重量およそ2500噸をこえ、砲身も1本あたり165噸という重さでした。
この重い砲塔と砲身は、500馬力原動機から送られる水圧を100馬力の水圧モーターに導き、そのバルブを各砲塔内の旋回手、俯仰手が操作して、射撃盤から来た角度を示す基針に、砲の動きと連動させた追針をあわせることで動かしていました。
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この基針と追針がぴったし一致しないと、トップの射手が引き金を引いても主砲は発砲しません。
砲塔の旋回受信器の基針、追針。
砲塔の俯仰受信器の基針、追針。
この4本が一致していないと、発砲回路が形成されないわけです。
『大和』型戰艦の場合ですと、3基の主砲のそれぞれで砲塔旋回用の旋回受信器1箇、砲身を上下に動かす俯仰受信器3箇―――3聯裝主砲の為3箇―――の針8こがぴったし一致していないと、主砲は発砲されません。
主砲3基9門の全門斉射を実施するには、各砲塔の旋回手1人、俯仰手3人の計12人が、最高水準の技量でピタリと揃ってないといけないわけです。

旋回手も俯仰手も、艦が出港すれば絶えず持ち場で訓練に励んでいました。
そうやって各員は自身の伎倆を高め、来るべき決戦に向け、備えていたのです。
その機会はほとんどありませんでしたが………

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弾着観測用の気球を繋止している戰艦陸奥/大正末期撮影
上空からの観測データも主砲射撃に必要なものであった



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荒天下を航行する戰艦榛名と先航する霧島
このような状況下でも命中弾を得るべく乗員は猛訓練に励んだ




壁|'-')ノよいお年を。
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